GUEST
ネオ・アット・オグルヴィ株式会社 チーフ マーケティング プロデューサー
山崎 浩人さん
R 4-1 消費者や企業のコミュニケーション課題
テーブル:本日の「出張テーブル」。お迎えしましたゲストのお一方目は、株式会社ミラコムの岩城 陸奥さんです。1999年の資生堂在籍時に、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会(旧・社団法人日本広告主協会)内に「Web広告研究会(通称「Web研」)という組織を立ち上げられた発起人として著名でいらっしゃいます。Web研は8社からスタートして、現在約290社以上とか。そんな岩城さんの考える「顧客とのコミュニケーション」とは?思いや取り組みなど、お伺いできますでしょうか。
ミラコム 岩城さん:
コミュニケーション全般についてですが、ネットの活況の一方で今、デジタルデバイド的なものがどんどん激しくなっていると思います。我々はネット業界にいるから見過ごしがちですけど。例えば震災の被災地で起きている様々なことがソーシャルで発信される。それを我々は知っているけれど、逆に現地の方々が受け取れない、というようなことがありますね。そうしたデバイドが多方面で出てきているので、私ができる範囲で解決したいと思っている。
一例ですが、ネットコンテンツを、視覚障害の方が見やすいようにコントラストを上げ下げ可能にするとか、聴覚障害の方のためにネットのCMにテロップを入れる。テレビじゃなかなか進まないでしょ。そういうことを仕事に入れ込んでいます。
企業コンサルとしては、社内の風通しを良くするための社内コミュニケーションの提案をやっています。縦割りの弊害が盛んに言われますが、コミュニケーションなら横串を通せる。それが結果的には、顧客とのコミュニケーションにも良い影響を及ぼすと思っています。
Webで「情報を発信伝達する」という言い方の一方的なニュアンスに、私は抵抗があって。「情報」と「コミュニケーション」は違う。方法はいろいろとあるけれど、互いの反応を感じ取れる。それがコミュニケーションであって、ネットやリアルを問わず、現在の企業に求められていることですよね。ソーシャルメディアの活用は、そういう意味で重要になってくると考えています。
R 4-2 顧客とのコミュニケーションは「ビジネスの基盤」
テーブル:岩城さん、ありがとうございます。もうお一方のゲストは、ネオ・アット・オグルヴィの山崎 浩人さんです。自動車メーカー8社連動による企画として注目を集めた「Drive Heart」プロジェクトのキー・パーソンで、常にコミュニケーション・プラットフォームの先端に触られてきた、ユニークな経歴をお持ちです。山崎さんにとっての「顧客とのコミュニケーション」について、お伺いできましたら。
ネオ・アット・オグルヴィ株式会社
チーフ マーケティング プロデューサー
山崎 浩人さん
ネオ・アット・オグルヴィ 山崎さん:
「顧客とのコミュニケーションとは?」という大前提を聞かれたら、僕は「ビジネスの基盤」かなと思うんです。そもそも僕は、広告会社でテレビCMをやっていたんですが、視聴率という数字はあるものの、本当に良い印象が伝わっているのか、あるいは悪いと思っているのかがわからない。広告というプラットフォームに限界を感じた、というのが発端なんですね。
そこで見つけたのがコールセンター。「顧客の声をマーケティングに活かす」というワンフレーズに「これだ!」と転職したんですが、そこで「ダイレクトなコミュニケーションの大事さ」を肌身で感じました。インターネットが出てきて、モバイルやタブレットが出てきて、世の中は変わり続けていますが、その上に乗るコミュニケーション自体は、「ビジネスの基盤」。たとえ革命的な商品でも、イノベーションを起こせるかどうかはコミュニケーション次第と感じています。
テーブル:かつては消費者へのタッチポイントがマスで、中でもテレビCMが一番大きかったと思うんですけど。どれくらいお仕事をされて、これは限界だという風に思われたんですか?
ネオ・アット・オグルヴィ 山崎さん:
会社としては20年くらい、僕は4年程、同じ番組を提供していたんですけど、視聴者の属性は変わっていってるはずなんですよね。けれども変わらぬものを出し続けている。そこにあるはずのギャップを、視聴率だけみていても埋められない……このことに、数年の流れの中でふと気付いた感じですね。
テーブル:限界を感じた時に「次はあそこだ」と、どうしてわかるんですか?そこがすごく不思議ですが…
ネオ・アット・オグルヴィ 山崎さん:
毎回、このプラットフォームは限界だなとか、やり切ったかなと思っていると、これだなというお声がかかるんですよ。コールセンターの次も、携帯事業者から「モバイルでポータルと広告と決済のワンストップモデルを作るから来ない?」。一応「考えさせてください」と言いつつ、その瞬間に「それだよ!」って(笑)答えを決めているんです。
R 4-3 ソーシャルメディアは「メディア」か!?
ネオ・アット・オグルヴィ 山崎さん:
そんなこんなで、気付いたら「インタラクティブ」というツールを広告業界に持ち帰ってきまして。デジタルとかネットとか言い方は様々ですけど、岩城さんの仰るように、やり取りが成立してこそコミュニケーションだと思うので、本質的には「インタラクティブ」という言い方が一番いいのかなと。
テーブル:山崎さんの手がけられた「Drive Heart」やサンシャイン水族館アプリなども、インタラクティブ性が重要な要素ですね。
ネオ・アット・オグルヴィ 山崎さん:
そうですね。クルマに関しては、最初にご相談を受けた時に、非常に画期的な、価値ある話だと思ったんです。ただ、そのままでは企画的に難しそうだとお返事したら、提案をお願いしますとなって。
サンシャインの方は…水族館って、建っている場所から動けないじゃないですか。でも「そういうものがワールドワイドだね」と思ってもらえるような仕組みをつくろうと。ブランド価値を疑似体験する、ビジネスのプラットフォームになる。1アプリやゲームという感覚ではまったくなくて「ブランディング」という認識です。
テーブル:なるほど、ありがとうございます。ここで岩城さんにお聞きしたいのですが、先程、少しソーシャルメディアの話題も出ましたが、マスやWebなどの多様なお仕事をされてきた中で、ソーシャルメディアの登場についてはどのようにお考えでしょうか。
ミラコム 岩城さん:
私の感覚では…ソーシャルメディアをいろいろやってみましたけれど、ソーシャルには二つの意味があるんです。いわゆる「社会性」という意味でのソーシャルと、「お付き合い」としてのソーシャル。後者は、クラブとかパーティーとか。ですから雰囲気を壊さないようにみんな仲良くやる。変なこと言うと追い出されちゃう(笑)。そういう世界。
まずはそういうものと捉えることが必要なんですが、ちょっと過大な期待で「世の中これで全部動いちゃうんじゃないか」なんて考えてしまう。それはまだ大分先の話で、それには人々のリテラシー不足だと思うんですね、量も質も。ただ、例えば山崎さんのように自動車メーカー8社集めてというのは、マス広告じゃできないわけですよ。あの使い方は素晴らしかったし、インパクトある前例を業界に作った。ですから上手く使っていくというのが非常に重要です。
今までのマス広告って、アドバタイザー側は本当に少人数で、媒体側、制作側と分業してというやり方で済ませてきたんだけど、ソーシャルメディアになると、企業サイトよりも手がかかるわけですよね。人もスキルも費用も用意するという覚悟がないと、本格的にはできないだろうなという感じがします。でも、力はあると思っています。「メディア」と呼んでいいのかどうかというのも、実は私は、抵抗があるんだけど。「ソーシャルメディア」って、もう定着してしまっていますね。
ネオ・アット・オグルヴィ 山崎さん:
そうですね。確かに、メディアと言っていいのかどうか。単純に人が集まっていればメディア、という簡単な定義ですよね。あえて違う言葉を使いたいなという気持ちはあります。
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