GUEST

ソフトバンク・テクノロジー株式会社/イービジネスサービス事業部 デジタルマーケティング統括部/クライアントサービス部/コンサルサービスグループ シニアWebコンサルタント

橋本 翔さん

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R 6-1 アクセス解析と、次に来るもの


テーブル:本日のゲストは、ソフトバンク・テクノロジー株式会社の橋本 翔さんです。この出張テーブルでは、ブランド側の方々にお話を伺うことが多いのですが、今回はちょっと趣を変えて、ブランドの「外側」からコミュニケーションを支援されている方をお招きしました。SIerとしての経験から、企業のIT活用の現状や課題、展望などをお伺いできればと思います。まずは御社の業態からご紹介いただけますでしょうか?

ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
当初よりEC市場等に注力してきましたので、仰る通り、SIerとしてお客様から認知していただいています。ビジネス領域としては2つ、オンラインビジネスソリューション&サービスと、クラウドイネーブリングに大別されます。

テーブル:その中で、橋本さんご自身の業務はどのようなものなのでしょうか。

ソフトバンク・テクノロジー株式会社
イービジネスサービス事業部
デジタルマーケティング統括部
クライアントサービス部
コンサルサービスグループ
シニアWebコンサルタント

橋本 翔さん

ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
私の担当はデジタルマーケティング領域で、7年ほど前から、アクセス解析製品を扱い始めました。従来製品と違って、サイトのどこがどれだけクリックされているか、パッと感覚的に把握できる。この分かり易さから、アクセス解析が劇的に広まるきっかけになったツールです。ただ当時は、マーケッターのツールというより、情報システム部門の方々がサイト評価に用いるケースが多かったですね。

テーブル:肩書きはシニアWebコンサルタントということですが、橋本さんの業務の幅というのは…?

ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
プリセールスから導入、トレーニング、サイト改善のためのコンサルティングまで、全てですね。幅が広いので、ちょっと体が足りないという状況です(笑)。

講演やセミナーもさせていただいていて、ユーザの皆さまには、アクセス解析の「次のステップ」のモチベーションとなるようなお話ですとかUSの先進事例、それから地方では「そもそもアクセス解析とは」をお話ししたり。最近では、アクセス解析の先の可能性をお話しすることも多いですね。

テーブル:「アクセス解析ツールの普及を通じて、企業のマーケティングを支援している」ということかと思いますが、現在に至るキャリアパスですとか、その時々の思いなどをお聞かせいただけましたら。

ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
元々はSE出身で、7年程、基幹系システムのリプレイスなどを行っていたんです。その中で、今話題のSNSの会社に出向として勤務することがあったんですね。そこでは、企業文化としてマーケティング部の力が強くて、サイトをどんどん変えていこうとか、ユーザにこう見せようといった動きが明確でダイナミックだったんです。

それで自分もマーケティングに興味を持ちまして、その延長線上でソフトバンク・テクノロジーに入り、アクセス解析を学びつつ、人に話す術なども学びまして、セミナーやトレーニング、分析レポートの提出などを行うようになった…というのが経緯です。

テーブル:なるほど。ちょうどWebとマーケティングという興味の交点に「アクセス解析」が現われたという感じなんですね。先程「アクセス解析の先の可能性」というお話がありましたが、具体的には今、何があるのでしょうか?



R 6-2 ディスカバリー&パーソナライズ


ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
2つあります。1つは「ディスカバリー」で、お客様の属性ごとにデータを見ていこうという考え方。もう1つは「パーソナライズ」で、これについては、現実的に行える環境がようやく整ってきたというところです。

テーブル:後者は、いわゆる行動ターゲティングでしょうか?

ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
そうですね。ログイン・購入していただく際に、既にユーザの属性情報を持っていれば、そこから遡って「東京都在住30代のこの女性は、何ヶ月前からサイトに訪れていて、どういうページを見ていたのか」等を見ることができます。どこでユーザの気持ちが変わって購入に至ったのかを突き止め、同様の行動を辿っているユーザに「パーソナライズ」でコンテンツを出し分け、購入率を上げようという考え方です。

テーブル:もう1つの「ディスカバリー」とは?

ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
今、重要になっているのが“ユーザの捉え方”なんですね。アクセス解析は、基本的に1回の訪問単位が対象です。しかし業界や商材によっては、検討期間が1ヶ月、3ヶ月とかかるようなケースもある。こういった時に「ディスカバリー」が意味を持ってくるんです。例えば、これまでビッグワードで来られていた…御社を例にとれば「コミュニケーション」というキーワードで来ていたユーザの方が、「テーブル」というブランドワードで来られるようになる。この“態度変容”のきっかけがわかれば、まだブランド認知ができていないユーザに響く訴求内容が見えてくるわけです。

テーブル:ディスカバリーは(訪問をまたいだ)ユーザ単位ということですね。対象となるのは、ログインされているユーザでしょうか。もしくはコンバージョンしたユーザなのか…どの辺をユーザと定義されていますか?

ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
私の話の中では、あくまでコンバージョンしているケースが一番重要かと思います。過去の行動履歴をコンバージョンしていない方と比較すると、どこかに違いがあるんですね。そこを発見するのがディスカバリーの意図です。



R 6-3 ITシステムとWebサイトの繋ぎ方


テーブル:アクセス解析というのは、現実に出来ている/出来ていないはともかく、企業のサイト運営における必須要件ですよね。そういう状況の中で、ビジネスとしてサポートする立場の、橋本さんのお考えを伺えますでしょうか。

…というのも、デジタルマーケティング的に言えば、サイトの解析というのはその手前に「サイトをいかに作るのか」を含む話だと思うんですね。現在のオウンドメディアは、設計やクリエイティブのポイントが、事後的にデータをどう見ていくのかと密接に係わっている。デザインという領域から見れば、「限りなく被っている」とも言えるかもしれません。

ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
ええ、デザインと一体化していますね。

テーブル:「デジタルマーケティング」と「IT」の区別は難しいところだと思いますが…そこをビジネス的にどう処理されているのかが、一番興味があるところなんです。企業に既に導入されている「基盤」ともいうべきITの部分との、繋ぎ方や理論立てをどうするのか。非常に難しい話になるかもしれないですが、あえてこのテーブルで突っ込んでみてもいいんじゃないかと思いまして。

ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
なるほど。そういう意味では、ひとつは製造業の方々。自動車などの大きな商材を扱っているメーカーが今アクセス解析で何をしようとしているかというと、オフラインとの繋ぎ込みなんですね。オンライン上でできるのは、資料請求や試乗車予約。あとは「いかに実際に新車を見て/購買していただくか」なんですが…当然、そのサイトがどれだけ売上に貢献したのかが重要になってきます。

方法は、例えばWebアンケート。実際に購入したユーザに回答していただければ、同一ブラウザ内の過去の情報は全部Cookieで繋がっているので、オンとオフを結べます。それから、コンバージョンしていないユーザの情報も知りたいということで、オンライン・サーベイの活用も広がっています。

もうひとつの考え方は、基幹データと組み合わせること。私が扱っているアクセス解析の製品では、生ログを外に出すことができるんですね。ですからBIに全部のデータを流し込んで分析をして、その結果をターゲティングの仕組みに戻す。そうやって、例えば3ヶ月何も購入していないユーザを見つけ、メルマガを打っては、パーソナライズしたコンテンツを見ていただく。こうした施策でコンバージョンを上げようと、皆様考えられています。



R 6-4 USは進む。日本は…?


テーブル:このテーブルという会社自体が「コミュニケーション設計」というデザインの領域を生業としていて、さらにはエンジニアリングも含みますので、その辺りのお話を、さらに突っ込んで伺えましたら。

ソフトバンク・テクノロジー 橋本さん:
デザインとITの結びつきは非常に強くなっていると思います。例えば、ユーザの反応がAがいいのかBがいいのか、ABテストをしましょうという際に、これまでですと、バナー作成の外注だけでかなりのコストがかかっていた。テストには必ずシステムが絡んできて、エンジニアのリソースを押さえることも必要だった。2~3ヶ月かかって、ようやく1テストです。それが現在では、テンプレート内で中身を差し替えるだけなら、URL1つで出し分けられる。誰に何を配信するかを手動で行うことも、完全な自動化もできます。

他にも、例えばバナー内のテキストや表示商品を自動的/動的に変えていくですとか、ユーザが以前見たけれど購入していない商品を再度バナーで見せるなど、「SALE」のバナー1つ取っても、こうした出し分けで相当クリック率が変わります。色やサイズなども、ユーザが一番クリックするものに自動的に最適化できます。ただ、実践に関しては、USでは非常に進んでいるものの、日本ではなかなか普及していきませんね。

テーブル:多分、日本の商風習も大きいんでしょうね。デザイン会社や代理店、SIerの役割が、ボトルネックにならないといいですね。

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