投稿者:片桐 暁
2012年11月15日
テーブルのメンバーは現在、それぞれ専門性の異なる4人からなっていて、僕の出自はコピーライターです(因みに今も現役です)。これがまた実に変わった職業で、僕の感じるところでは、大抵の人が抱いているイメージと実際の業務内容には、驚くべき乖離があります。しかも現在では、絶滅の危機が懸念されているレッドデータ・プロフェッションだったりします。
…といった話は長くなるのでさて置いて。世の中には「製造」や「金融」といった様々な業界がありますが、コピーライターには、そういった“足場”みたいなものがありません。業界から業界へ渡り歩いては、取材やヒアリングをして文章を書くというイメージですから、「足場がないのが足場である」とでもいうべき、特殊な業態なのです。
僕はこれをよく「素人のプロ」という言葉で説明したりしています。素人であることを武器に様々な分野に分け入っては、素人の感覚で捉えた内容を、素人の感性を失わずに消費者へ向けてアウトプットする。そんな職業だからです。
しかしそもそも職業とは、蓄積された専門技術のことではないでしょうか。「素人のプロ」だなんて、あんまり威張れる感じがしません。むしろ、どうにも所在ない感じで世間様にいささか申し訳ない。特殊技能といったら、え〜っと…日本語が書けるくらい!?いやいや、それは誰でも書けるだろう。というわけで、当の本人ですら「これで一応お給料いただいておりますが、よろしいですか?」といった気分がちょっとだけありました。
ところが近頃になって、ついに開き直った…わけではなくて、社会の風向きと共に、考え方が変わってきました。現在は「消費者起点の時代」と言われます。そして正に、その思想を昔から実践し続けてきたのが、実は、コピーライターという人種だった。「足場がない」というより、逆に広大すぎて認識できていなかったんですね。ふと気が付いてみれば、この世界がまるっと全部、足場だったんです(なんというコペルニクス的転回!)。
ああ、これからも消費者(兼)消費者の代弁者としてがんばっていこう…そんなことを思う、今日この頃です。
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